ドールハウス作りはかれこれ10年近い趣味です。ドールハウスとはなんぞ、という方のために簡単な説明をすると、10~20分の1サイズの家を制作する遊びです。
なぜに突然ドールハウス? 風船宇宙撮影と関係あるの? と思われるかもしれませんが、まずはとりあえず昔作っていたドールハウスの写真をご覧ください。
呉服屋さんです。自分で設計して設計図を作り、材料も自分で選定し制作しました。
ドールハウスというと、どれも洋風で、慣れ親しんだ和室がほぼありません。
私は懐かしい感じのする和風のドールハウスを作りたかったので、自分で作ってみました。
ちなみにサイズ感はこんな具合です。
これが文卓。引出も開きます。
なぜ突然ドールハウスのお話しをしたかというと、風船宇宙撮影とドールハウスは結構似ているからです。
ドールハウスは家を作るのに必要な材料を自分で考えて探してこなくてはなりません。
これは風船宇宙撮影も同じです。
寸法誤差が大きかったり、素材の選び方が正しくないとと宇宙撮影の機体が空中分解してしまいます。
ドールハウスも同じで上手くくみあがりません。
ドールハウスの場合、1mmのずれがあったら組み立てることができません。許される誤差はせいぜい0.2mm程度までです。
ドールハウス作りで培った技術が、風船宇宙撮影にかなり広く使用されています。
精密加工が可能に
風船宇宙撮影で使用する材料は発泡剤が多いです。
発泡スチロールやスタイロフォーム、発泡ポリプロピレンなどなど。
これらの素材は発泡スチロールカッターで切り出しますが、スチロールカッターは溶かして切るので、きっちりとした加工が苦手です。
例えば角を出すような加工、ほんの0.3mm程度の誤差修正、3次元構造の切り出し。このようなことをするのはとても難しい。
しかしドールハウスの応用で制作すればこのように誤差なし、角もきっちり加工できます。
正直な話、風船宇宙撮影の機体作りにはドールハウスほどの精密さは要求されません。
5mm程度ずれがあっても問題ないことも多いです。
しかし、『単に撮影する』から先を目指そうと思うと、精度が必要になってきます。
現在制作している機体は、特殊な撮影用に制作しているので、1mmの誤差があるだけでも致命的になります。
このような機体制作はドールハウスで遊んでいたからこそ可能になっているのです。
こんな感じにきっちり。
素材選定・素材ごとの高精度加工
風船宇宙撮影では、宇宙環境で使用する前提で制作します。
非常に特殊な条件なのですが、身の回りにある物質の物性をしっかり調べ、事前にチェックした上で選定し、使用することで様々な宇宙撮影が可能になっています。
最近では用途に合わせてかなり幅広い物質を使用しています。
構造部分だけでも様々です。
・ポリエチレン
・ポリ塩化ビニル
・ポリスチレン
・ポリカーボネート
・ポリプロピレン
・アクリル
・紙
・木材
・布
木材は木の種類、部位によって性質が異なりますし、温度湿度によって物性が変化するものですが、木材でないとできない仕事もあったりするので、やはり必要です。
これら様々な素材を精密に、細密に加工するためには適切な道具を適切に使用し、それなりに慣れていないといけません。
ドールハウスもかなり様々な物質を使っていて、共通するものも多いです。これらの加工のために必要な道具は一通りありますし、慣れたものです。
実は宇宙とは全く関係のなさそうな、ドールハウスという趣味も、かなりたくさん宇宙開発に役立てられていたりします。